失われた古都の夜(その2)

京都の夜に訪れた中で、境内に入って撮影できたのは南禅寺の三門だけだった。周囲の光は境内の木々に遮られ、火災報知器を照らす灯りを除けば境内は暗く、三門の甍の上には土星や北斗七星が静かに光っていた。学校帰りの高校生が時々横切るのと上空を通過する航空機を除けば、都市の喧噪とは無縁の世界だった。

b0167343_1363229.jpg暗い境内でも不気味さを感じなかったのは、星が見えていたからだろうか。木の枝を微かに揺らす夜風と、漂う古寺特有の香りが心地よかった。春の宵の雰囲気を五感で味わいながら、方向を定めてはデジカメを地面に置き、心行くまで撮影することができた。

何百年も前から自分と同じように三門と星空を見上げた人々があったろう事に静かな感動を覚えるとともに、古都の本来の姿に一歩近づいた気がした。

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各所でライト・アップされた古都の姿はたしかに美しく、それで有名な高台寺の門前には夜になっても人が絶えなかった。しかし、何百年も脈々と続く京都の夜を最も感ずることが出来たのは、暗く静かな南禅寺の三門の上の夜空だった。

満天の星の中に影のように浮かび上がる塔や、月光を纏ってほんのりと浮かび上がる塔・・・・。建立以来ずっとあった夜の五重塔の本来の姿を、当たり前に見上げる事はもう難しいのだろう。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-04-23 01:47 | 月のある風景