赤い星たち(その1)

これまでに何度か父の話が出て来た。これを母が読むはずもないが、父の話ばかりでは申し訳ないので、母の話も書いておこうと思う。

商売をやっていた両親は、子供心に本当に忙しそうだった。来客も多くて、母はてんてこ舞いだったはずだ。だから、母に趣味と呼べるようなものは全くなかった。ただ当時はどこの家でもそれが当たり前だった。

b0167343_16283716.jpg仕事と子育てに追われていた母だが、われわれ子供達が次々に親許を離れ、父も3年間の闘病生活を終えて旅立ちしばらくすると、キルトを始めた。今から20年ほど前になる。

習うのなら一流の先生に、と母は考えたようだ。東京の国立市で教室を主宰している実力派の先生のもとに、月に1度片道2時間かけて列車で通うようになった。

それからキルト作りが母の生活の全てになったと言っても過言ではない。欠かさずに教室に通いながら、身の回りの事をする時間以外はひたすら針を持って布に向かうようになった。今日も間違いなくキルトと向かい合っているはずだ。

そんな母が、キルトを始めてから10年近く経った頃に、約1年をかけて縫い上げた作品がこれである。「赤い星たち」と命名された幅1.6メートル縦2.2メートルの大作は、我が家の吹き抜けに飾られている。

b0167343_16281475.jpg写真は昨夜のさそり座頭部だ。赤い星の代表であるアンタレスは、薄雲と満月にも負けず赤く光っていた。きれいな写真ではないが、母の日のカーネーションのかわりでもある。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-05-10 16:41 | 月・星のある風景