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よみがえった望遠鏡の記憶(2)

記憶の糸をたぐり寄せると、次々に場面がよみがえってきた。

自転車を押すおじさんと一緒に町中の釣具店に行った。道が濡れていたような気がするので、あるいは夕立の後だったのかも知れない。間口の狭い店でゴカイを買った。ゴカイを見るのは初めてだったが、おがクズの中にいるゴカイは少し気味が悪かった。

そのゴカイをエサにして、港に近い河口とつながる細い支流で釣りをした。近くには古い木製の小舟が一艘繋留されていた。日差しはなくて、水はどんより濁っており潮が満ちていた。

釣り糸を垂らすと直ぐにハゼが釣れた。最初のうちはゴカイを針に付けたりハゼを外す度にキャーキャー言っていた従姉もすぐに慣れた。それほど良く釣れた。

葉っぱのようなカレイが釣れる事があるというおじさんの言葉にカレイを期待したが、釣れたのはハゼばかりだった。それでも釣果は満足できるものだった。

漁港の近くを散歩した記憶もあった。釣りの行き帰りの道だったのかも知れない。埋め立て地のような場所で大きなカキ殻を見つけた。海のないところで育ったので珍しく、喜々として拾った。土地の人にとっては何でもないはずだが、おじさんは何も言わずニコニコしていた。

カキ殻のツルツルした内側に、一部地図の等高線のような貝殻模様があって化石のように見えたのを不思議に思った記憶もよみがえった。このカキ殻は家までわざわざ持ち帰ったはずだ。

そんな中で、よりによって弟が熱を出した。おじさんは弟を背中にひょいと背負うと、暑い中を近くの医者に歩いて連れて行ってくれた。そのおじさんの後ろ姿が頼もしく、不安は消し飛んだ。

ハシカだったと当時は聞いたような気がするが、今にして思えばそんなに長く患った憶えはないので、別の夏カゼだったのかも知れない。

by Nikon8cmtelescope | 2009-05-27 01:06 | 天文少年の頃