高原の星空
先週の日曜日に友人と一緒に標高1,700メートルの山間にある小さな高原まで星を観に出かけた。夏休みに水晶の採取に出かけた山の手前で、水晶の採取などで山に度々入っている友人にとっては庭のような場所だ。夕方の林道を登っていくと、ヘッド・ライトの灯りの中で鹿の群れが道を横切って行った。
一度は星空が広がったものの、雲が徐々に増えてきてとうとう星がほとんど見えなくなってしまった。落胆する私の傍らで友人は泰然自若としている。独りだったらとっくに諦めて星空を求めて移動を始めるところだが、機材を出したまま地面に敷いたシートに寝転がり、友人とおしゃべりをしながら雲間に時々現れては消える星を眺めていた。下界では虫の音が賑やかであるが、高原の夜は虫の声も疎らで吐く息がもう白く見える。
そのうちに星が見える範囲が広がってきたと思ったら、あっという間に雲が飛散して見事な満天の星空が現れた。言うまでもなく、普段家から見ている星空とは別世界だ。いやがおうにも気分が高揚してくる。そんな中で例によって望遠鏡で星雲・星団を手持ち撮影する一方で、別のコンパクト・デジカメで銀河を撮影していた。
友人は登山靴に履き替え熊よけの鈴を付けると、懐中電灯を頼りに真っ暗な草原の斜面を登り始めた。小さな頂の上から向こうの星空を眺めて来るつもりだと言う。山好きとしては夜とは言え山の中でじっとはしていられないようだ。人のことをとやかく言えた義理ではないが、趣味とは門外漢の理解を超えたものらしい。私は次第に遠くなる鈴の音を聞きながら撮影に励んでいた。しばらくすると、鹿の鋭い鳴き声が連続的に聞こえてきた。夜の静寂を破る侵入者を威嚇しているようだ。その剣幕にさすがの友人もすごすごと途中で退散してきた。
星空を大いに堪能して名残惜しいながらもそろそろ帰ろうかと、銀河を撮影していたはずのカメラでフラッシュを焚いて友人と記念撮影をした。ところがモニターで確認すると、まるで霧の中で撮影したかのようにボンヤリとしている。晴れるのを待つ間にレンズが結露したのに気付かすに撮影していたのだ。慌ててそれまでに撮影した写真を確認してみたが、銀河はおろか夏の大三角ですらまともに写ってはいなかった。
by Nikon8cmtelescope | 2009-09-20 11:43 | 月・星のある風景