憧れの地へ(その6)

部屋に戻ってベッドに横になってはみたものの、憧れの地にいる興奮で眠気が訪れる気配はない。仕方なしに起き出して、発表の予行練習を始めてみたが星空が気になり集中できない。だが北向きの窓から空をみるが星は全く見えていない。それなら仕方がないと横になると、いつの間にか眠っていた。

目が覚めて時計を見ると午前3時前だ。窓から見える北側の空は曇っているが、身を乗り出すようにして天頂付近を見上げると辛うじてベガが見えている。部屋からは確認できないが、東側が晴れていれば月が見えるはずだ。身支度を整えデジカメ片手に外に出てみると、薄雲の向こうに弱々しく月が見えている。そこで、再び第一赤道儀室に向かった。

ドームと月にカメラを向けて撮影してみたが、ドームに露出をあわせると月がつぶれてしまうし、月に露出をあわせるとドームが暗闇に沈んでしまう。さすがに構内でフラッシュを焚く訳にはいかない。仕方なく、とぼとぼと宿所に向かって歩きはじめた。しばらく歩いて、月を見ると隣に雲間から木星が顔を出しているではないか。

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大慌てで第一赤道儀室の前に戻ると、カメラを地面に置いて第一赤道儀室を前景に月と木星のランデブーを撮影した。ドームが高床式の古代神殿を彷彿とさせる佇まいで、随分と神々しい感じがした。考えてみれば、このドームは90年近くもこうして空を見上げてきたことになる。設置されてしばらくは真っ暗な夜空の下にあったろうし、空襲で赤く染まった空も知っている。神々しいのも無理はない。

部屋に戻り横になると、窓の外は既に明るくなりはじめていた。
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by Nikon8cmtelescope | 2010-06-18 01:51 | 天文少年の頃