星空を求めて(その4)

半袖では寒くてサマーセーターを重ね着した。山荘にでも合宿している若者達だろうか、遠くから歓声が時々聞こえていたが、夜が更けるにつれて静かになった。すると時折周囲の林から鹿の甲高い声が聞こえて来る。自宅の周辺だと、立秋を半月あまり過ぎても遠慮がちに鳴くコオロギの声以外にはほとんど感じられない秋の気配が、ここでは圧倒的な勢いで迫ってきた。

望遠鏡が使えなくなったので、肉眼と双眼鏡で星空を散歩でもするようにゆっくりと眺める。思えば自宅だと条件の良い晩は星図と首っ引きで望遠鏡を次々にメシエ天体に向けてはデジカメに収めるという、まるでガイド・ブック片手に名所を次々に駆け回る旅行のような慌ただしい楽しみ方だった。じっくり眺めるよりもカメラに収めることが優先で次へと急ぐ様は、まさに観光ツアーのようだった。

しかし、ここでは双眼鏡を向けるだけで次々に星団や星雲が見えてくる。その1つ1つに立ち止まっては心ゆくまで眺めていると、宇宙と対話しているような気分になる。そうは言っても、美しい星雲・星団に望遠鏡を向けられないのは何とも口惜しいのだが・・・。

b0167343_0134457.jpg
二重星団やアンドロメダ銀河が浮かぶ辺りに望遠鏡の代りにデジカメを向けた。15秒の固定撮影を10コマでコンポジット処理したが、中央からやや左上の天の川が淡くなった辺りに小さくM31アンドロメダ銀河が写っている。地上の景色が入っていないので、隣の銀河であるM31がたくさんの星の向こうに見える様には、宇宙の奥行きが感じられる。じっと見ていると、銀河を透かして遠くのアンドロメダ銀河を眺めているような錯覚に陥るが、これは錯覚ではない。星空を見ることは宇宙を眺めることなのだと実感できる写真だ。
[PR]

by Nikon8cmtelescope | 2010-08-31 00:16 | 月・星のある風景