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威風堂々(M13球状星団)

思いもかけない展開になった。ウイルシステムデザインという移動プラネタリウムを手がけている会社から、天体写真を使いたいというビックリ仰天のお話しをいただいたのだ。一般の人達を対象にして星空に親しんでもらえるような展示パネルを準備しているので、小望遠鏡で楽しめる星雲・星団を紹介するのに写真を使わせて欲しい、という夢のような提案だった。星雲・星団の写真なら他に適当な方がたくさんいるはずだが、「小屈折望遠鏡で見ているままを写す」というコンセプトの写真こそが企画に相応しいというお話しで、なるほどなあと思う。

威風堂々(M13球状星団)_b0167343_23423040.jpgそこで、季節ごとの代表的な天体の写真を幾つか選んでお送りしたところ、早速に冬の天体についての試作版を送り返して下さった。大きなパネルに、代表的な星雲・星団としてM1M37M42M45の写真を入れて下さっている。立派なパネルにして下さって嬉しい反面、少しでも見栄えのする写真にしたいものだと強く思った。展示は4月初めということなので、「手持ち」ではないがリングを使っての「望遠鏡で見たまま」のお手軽撮影で、春の代表的な天体を撮影し直そうと考えた。こんな立派な大義名分があれば平日の晩に遠征してもいいだろうと、3月2日の夜遅くにNikon 8cmを車に積込んだ。
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八ヶ岳方面には少し雲が出ており、また雪に降られた前回の苦い経験もあって、別の場所を考えた。しかし富士山麓まで出かけるには時間も遅く翌日の仕事に差し障りが出そうだ。そこで自宅から車で20分ほどの盆地の南縁にある山中に向かった。北西の空は街灯りの影響が強く、南側は山が迫って視界が狭いのが難点だが、自宅周辺に比べれば上々の条件だ。街灯りの影響の少ない東の空で、夜半過ぎに高度を上げてきたM13球状星団を撮影した。望遠鏡で覗くと星団周辺部の微光星が分離して見えて、星が密集していることが感じられる。リングで接眼レンズにコンパクト・デジカメを装着すると、日周運動の影響を最小限にするため露光時間を1.6秒と短く設定して撮影し、64コマをコンポジット処理した。

威風堂々(M13球状星団)_b0167343_2347229.jpg高度があって気流の影響も少なく風も弱かったのに加えて、露光時間を抑えたことも功を奏して密集した星の集団である様が以前の写真よりかなりよく写っている。星団自体の大きさはオメガ星団には遠く及ばないものの、なかなか堂々たる姿で、北天で最大規模の球状星団たる偉容が十分にうかがえる満足できる成果になった。

by Nikon8cmtelescope | 2011-03-08 00:05 | 手持ち撮影にこだわる訳