禁断の果実(M97ふくろう星雲)

手持ち撮影ということでやってきたが、リングによって接眼レンズにコンパクト・デジカメを直接に密着できるようになったので、「手持ち」という枕詞がはずれてしまった。手持ち撮影による凍傷の危険がなくなったのはよかったが、両手が自由になると人間は思わぬことをはじめるものらしい。二足歩行で両手の自由を獲得することによって進化してきた人類にとって、それは宿命とでも言うべき性なのかもしれない・・・。

リングのおかげで、目的の天体を望遠鏡に導いてデジカメを装着し、テスト撮影を重ねて構図と露光時間を決めると、日周運動で移動していく対象天体を視野の真ん中に戻すだけで、コマ数を重ねていくことができる。セルフタイマー機能を利用すれば一回に3-4コマは連続撮影が可能なので、また微動ハンドルを手動で操作して視野の中央に対象物を戻し撮影を繰り返していく。ただ、日周運動の影響を最小限にして星を点像に近く写すには、北天の天体なら3-4秒の露光時間も可能だが、天の赤道に近い天体は1-2秒の露光時間がせいぜいだった。

展示パネル用の写真撮影のために3月4日の晩も郊外に出かけて、微動装置を動かしては対象天体を視野の中心に導くという動作を繰り返しているうちに、いちいちデジカメのモニターで確認しなくても視野の中心に戻す手加減がつかめてきた。そこで、ふと思い付いた。露光時間中も微動装置を動かし続ければ、比較的長い露光時間でも日周運動が相殺されて点像が得られるのではないだろうか・・・。ただ、露光中は対象天体を見る事ができないので、手加減ひとつで追尾を行うことになる。いわば簡易手動追尾という寸法だ。早速にM97ふくろう星雲で試してみた。露光時間を5秒にしてセルフタイマーを8コマの連続撮影に設定してシャッターを切ると、露光中も微動装置のハンドルを握りしめて動かし続けてみる。出来た写真をモニターで確認してみると、半分ぐらいのコマで微動のスピードがうまく合って星がほぼ点像を結んでいた。

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ということで、左側が3月2日の晩に従来の方法によって露光時間3秒で撮影した64コマをコンポジット処理したもので、右側が3月5日の晩に簡易手動追尾によって露光時間5秒で撮影した32コマをコンポジット処理したものだ。単純計算での積算露光時間は、前者が192秒で後者が160秒になる。簡易手動追尾だと、微動装置の振動のためか星がやや肥大しているが、線状に写るよりは見栄えは良い。なにより、フクロウの目玉(というより豚の鼻という方が相応しい感じだが)がかろうじて写っているのがわかる。従来の撮影方法よりも解像度が高く、積算露光時間が短い割には対象が明るく写っている。

両手が自由になって、追尾という禁断の果実にとうとう手を伸ばしてしまった。思えば遠くに来たものだが、いったいこれからどこまで堕ちていくのだろうか・・。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-03-11 02:38 | 手持ち撮影にこだわる訳