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「簡易手動追尾法」(その1-M13球状星団)

「簡易手動追尾法」(と勝手に命名してしまうが)は、望遠鏡の接眼レンズにコンパクト・デジカメをリングで接続して、対象天体を見ずに赤道儀の微動装置をブラインドで手動追尾するという方法だ。リングのおかげでカメラと望遠鏡の接眼部を手で押さえる必要がなくなったので、指が凍傷になる可能性を免れることができたし、また赤道儀とリング以外の特別な装置は必要としない(お金がかかっていない)という意味では「お手軽」なのだが、手動追尾のために指先の切ってある手袋で微動装置を握りしめていると、だんだん指先の感覚がなくなってきてカメラのシャッターがスムーズに押せなくなってくる。

そんな困難を伴う「簡易手動追尾法」だが、始めてみると止められない。多くのコマでは結局は星が流れて写るのだが、うまいこと日周運動が相殺されると眼視では見えなかったような対象天体の淡い部分まで写ってくる。そうかと言って露光時間を長くし過ぎると、それと反比例して成功する確率も下がる。ギャンブル性が高いためか「次こそは」とついつい力が入るが、冷静さを失えば成功率はさらに低下する。10コマ撮影して全て失敗などということもザラになってくる。

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3月9日の晩にも「簡易手動追尾法」を試みるために八ヶ岳山麓に出かけた。左側の写真は、M13球状星団を露光時間6秒の「簡易手動追尾法」で撮影した中のベスト・ショットだ。追尾なしに1.6秒の露光で撮影した64コマをコンポジット処理した以前の画像に比べて、コンポジットを行っていないにもかかわらず遥かに鮮明に星団の姿が写っている。追尾に伴う振動のためか星がやや肥大しているが、M13が確かに星の塊であることが明確に捉えられている。このような画像がデジカメのバックモニターに現れると、「よし」という気持ちになって凍える指を擦りながらついつい頑張ってしまうという訳だ。そして右側がそうやって得られた4コマのコンポジット処理である。

8cm屈折望遠鏡とコンパクト・デジタルカメラを組み合わせた自動追尾装置なしのコリメート撮影法で、こんな写真が撮れるとは・・。もう後戻りは出来ないなあ。

by Nikon8cmtelescope | 2011-04-11 00:06 | 星団