Slow and Steady

今回はNikon 8cmと直接には関係はありません。しかし、全く関係がないかと言えばそうでもないのです。それまでのドンヨリとした天気から一転して素晴らしい夏空が広がったものの、月齢は満月前後という巡り合わせ。夜になると美しい月明かりです。しかし、これでは星雲星団の撮影はできません。その美しい空を見上げて指をくわえてイライラを募らすぐらいなら、いっそのこと・・・・と、かねてからの計画を実行することにしました。

盆地の底から朝な夕なに見上げる山々の中で、登ってみたいなあと思っている峰が幾つかあります。しかし、険しい山容はどれも私を拒んでいるかのようにも感じられます。そんな峰々の中では比較的標高が低い鳳凰三山は、冥王星の命名で知られる野尻抱影の随筆にもしばしば登場し、なかでも細い弓のような月が鳳凰三山の頂に沈んでいく様を望遠鏡で見る話しは強く印象に残っています。しかし、鳳凰三山の一角の標高2780メートルの薬師岳までは、手軽に登れるとされる1380メートルの夜叉神の登山口からのルートでも、標高差が1400メートルで全行程は18キロメートルもあるのです・・・。

友人の手招きで、昨年の秋に標高差が約1000メートルで行程が8キロメートルという山に登り、体の重さを再認識しました。それから食事に注意し大嫌いなスクワットを含む体操で体幹を鍛えて、今年の梅雨時に標高差800メートル前後で行程が9キロメートルのミニ縦走にも挑戦しました。いずれも友人のサポートで無事に帰ってくることができました。それから更に体重を絞り、正月に記録した最高記録からだと約6キログラムの減量となりました。しかも、夜な夜な体操に励み始めた頃はそのせいで朝からダルさの残る日々だったのが、最近は朝のダルさが随分と緩和されていることを自覚するようになりました。これなら登れるかも・・・・その気持ちを後押ししたのが、満月期に迎えた晴天だったのでした。折よく職場も落ち着いていて金曜日に休みをとりました。急な決行なので今回は単独行です。

いつもの天体写真撮影なら薄明の中を車で山から戻るところを、今回は山へと向かいます。登山口に着いたのが午前5時。準備を整え出発します。長い行程なので、できるだけ脚力を消耗しないように歩幅は小さく、一足ごとに反対側の足はリラックスさせ休ませるような意識で登ります。間もなく夜叉神峠の山小屋に着きました。白根三山と呼ばれる南アルプスの峰々が朝の光の中で美しく見えています。この場所は星景写真でも有名な場所です。
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この辺りから若者2人組と一緒になりました。若さにまかせて大股でグイグイと登る二人組は、ノロノロと歩く私を颯爽と追い越します。しかし小一時間も登ると休憩している二人に私が追いつき先行します。すると間もなく二人は私を追い越していくのです。そして私が3度目に追いついた時には、彼らも苦笑していました。まさにカメがウサギに追いつく図です。そして、その後は彼らが追い越すことはありませんでした。

Slow and steady・・・念仏のように呟きながら、とうとう薬師岳の山頂が近付いてきました。
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振返ると、遠く富士山も雲海の上に姿を見せています。
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山頂までの所要時間は5時間半。夏山シーズンとは言え平日だからか山頂には誰もいません。白砂を敷きつめたような山頂からは南アルプスが大きく見えます。爽快この上ない景色を満喫しました。澄み切った青空を眺めていると、ここからの星空を想像せずにはおられません。
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尾根続きには鳳凰三山の1つ観音岳が見えています。縦走してみたいという欲望を抑えたのは、薄くなった空気です。登りはちょっと動くだけで動悸がしてきます。
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後ろ髪引かれる思いで薬師岳山頂を出たのは午前11時過ぎでした。山頂近くの山小屋で弁当をひろげていた二人組に会釈して帰路につきます。

ペースを守って快調だった登りに比べて下りは過酷でした。鍛えたハズの太腿が悲鳴を上げて、1時間も下らぬうちに脚は棒のようになってしまいました。それでもslow and steadyとつぶやきながら歯を食いしばって歩を進めます。歩幅はどんどんと短くなって、最後の方は牛歩どころかカタツムリが動いているかのようでした。いや、本当のところ歩くよりも這った方が早かったでしょう。登山口に辿り着いたのは16時半でした。

家に戻りひろげた新聞には、たまたま中高年の登山ブームの記事があって、専門家からの注意点が書かれていました。曰く「下りのために体力を4割は温存しておくこと」。いや6割は残しておいた方がよい、というのが今回の感想です。

最後に、途中で間近に姿を見たホシガラスの写真。
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・・・体色は全体的にチョコレートのような黒茶色だが、白い斑点が縞をなしているため、星空のようにみえる。和名の「ホシ」ガラスはこれに由来する・・・wikipediaより引用
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by Nikon8cmtelescope | 2012-08-06 23:50 | 月・星のある風景