真夜中の狙撃手

1月の新月期は、あまり出かけることが出来ずにいたので、2月の最初の週末に下弦の月が夜半に昇ってくるのを承知で出かけることにした。相変わらず八ヶ岳方面は季節風が強い予報で、さりとて富士山麓まで出かけるのにはもう時間が遅い。そうなると、このところホームグラウンドのようになってしまっている盆地の東部山間部が唯一の選択肢となった。街明かりの影響は強いのだが、自宅から30分ちょっとという手軽さと、山が迫って空が狭い分だけ季節風の影響が少ないというので、このところよく足が向くようになった。

家を出たのが遅くて月が昇ってくるまでの持ち時間は1時間ちょっとだったので、最初はフィルターなしでコリメート撮影し、月が昇ってからはLPS-V4を使って撮影した。しかし午前2時を過ぎると、月明かりでハッキリと地面に影が出来るようになったので、さすがに撮影を諦めかけたのだが、ふと思いついてコリメート撮影の様子を撮ってみることした。

普段の撮影では、焦点距離1200mmのNikon 8cm本体に天頂プリズムを付けた上で、接眼レンズにはタカハシのLE30を組み合わせて(倍率でX40)アダプターでコンデジ(Canon PowerShot S95)を装着している。ガイド鏡は、親亀子亀でNikon 8cmの上に載せたミニ・ボーグ(口径5cm、焦点距離250mm)に、2倍バローレンズと天頂プリズムを併用してミニ・ボーグの焦点距離を825mmまで延ばした上で、12.5mmの暗視野照明付きの接眼レンズを組み合わせている(倍率でX66)。

右手でフレキシブル微動ハンドルを握りしめ捻りながら追尾し、左手は微動ハンドルの付根を軽く支えて微動装置の回転を安定化させるようにしている。微動ハンドルを一番スムーズに動かせるように立ち位置を工夫し、その上でガイド鏡をのぞきやすいように、脚の開き具合で頭の高さを調整する。目の位置が少しでも動くと、十字線とガイド星の見え具合が微妙にズレるので、臍のあたりの腹筋を締めるような感じで体を安定化させて、体勢を維持するように心がけている。天頂方向の対象を撮影する時だけは、子供たちが小さかった頃に使っていた高さを変えられる椅子を使っている。

完全な手動追尾なので、どんなに冷え込みが厳しくても撮影中は望遠鏡を抱くようにして微動ハンドルを捻り続けなければならない。当然ながら寒さで体が震えたら画質に大きく影響するので、防寒対策が重要になってくる。下は防寒下着を2-3枚重ねて履いた上に登山用のズボンを履き、その上にキルティングの防寒ズボンと雨着のズボンを重ねている。上半身も同様に重ね着して、頭は目出し帽の上にさらに毛糸の帽子を重ねる。靴下だって冬物を3枚重ねて履いている。これだけ重ねると、風さえなければ氷点下10度でも汗をかくほどだ。

b0167343_0415324.jpg

この写真、目出し帽を着用という出で立ちに加えて周囲の景色の加減なのか、どことなく中央アジア辺りで闇夜に紛れて活動する狙撃兵のようにも見える。最新鋭の機材を備えた某国に、前時代的な機材で無謀にも抵抗を試みる姿!?・・・

・・・改めてこうしてみてみると、機材はいたってシンプルだ。なんと言ってもコードが1本もない。だから、コードを1本忘れたばっかりに撮影ができないなんて悲劇とは無縁だ。追尾の動源は最近はハシより重いものはほとんど持っていない右腕一本で、ガイド鏡のCCDカメラないしWebカメラは老眼の進行が著しい右の目玉、オートガイダーは人の名前がなかなか思い出せない錆び付いた脳みそ・・・。精度は低いが、原因不明のトラブルなんてマズない。寒さや疲労が大敵だが、人には見せられないような厚着と「キレイな写真が撮れるかも・・・」という妙な期待感でカバーしている。弱点は、撮影中は話もままならないこと。おしゃべりしながらだと、老眼CCDカメラと錆び付き脳みそオートダイダーが機能不全に陥ってしまう・・・。

こんな格好で撮影している姿を見かけたら、どうぞ声をかけて下さい。ただ、追尾を機材に委ねて皆様とゆっくり談笑という訳には参りませんので、お許しを。
[PR]

by Nikon8cmtelescope | 2013-02-17 00:41 | 月・星のある風景