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メシエ天体征服へカウントダウン(M89/M90銀河)

メシエ天体の完全制覇を目指して、まずはM95とM96を2つ同時に済ませると、気持ち的には少し勢いがついた。そこで、他に複数の未踏破メシエ天体が同一視野に入る領域はないものかと探したら、M89とM90ならイケそうだと睨んだ。

2月の新月期、盆地は朝から降り始めた雪が日中の気温の上昇とともに雨へと変わり、いくらか積もった雪がすべて消えてしまった。そして、夜になるとどんどんと晴れてきて、透明度の高い星空になった。気温も下がって、雨でゆるんだ土も凍って引き締まりそうだ。よっし!と機材を車に積み込んで盆地の東部の山間のいつもの場所に向かった。

目的地の直前の坂までは、路肩に若干の積雪が残っている程度で車の走行には全く支障がなかった。しかし最後の坂で急に積雪が増えて、オオっと思ったが勢いで上りきった。公園に着くと、一面の銀世界で、10cm程度の積雪が誰の踏み跡もなく広がっていた。

せっかく来たんだしと、満天の星空に誘われるように雪面に三脚を突き刺してNikon 8cmを組み上げた。目的のM90の細長い紡錘形は、あっさりと視野に入ってきた。一方、M89は意外と見えづらく、接眼レンズにコンデジを装着して撮影しながら探した。そしてM89、M90と三角形を作るように位置するNGC4531もバランス良く収まるように調整して、撮影を開始した。

手動追尾しながら冷たい外気で頭を冷やしたせいだろうか、撮影の途中で小さな不安が心臓の鼓動に呼応するようにムクムクと育ってきた。来る時は勢いで乗り切った雪の斜面だが、夜の冷え込みとともにアイスバーンになるのでは・・・。そうなったら無事に下ることができるのだろうか・・・。他に誰もいない山中でスタックしたら・・・。

そう考えると、いくら素晴らしい星空で、極軸合わせが万全とあっても、下り坂の恐怖が勝ってしまった。露光時間を延ばそうなんていう意欲は消え失せて、それでもなんとか予定のコマ数だけはこなすと、大慌てで機材を撤収し車を出した。下り坂の手前までくると、下手なスキーで緩斜面から急斜面に突っ込む時のように幸運を神様に祈りつつ、エイやとストックならぬハンドルを握りしめ斜面へと臨んだ。

幸い心配したようなスリップはなく、あっさりと雪の斜面を通過すると、もう逃げるように家路へとついた。

メシエ天体征服へカウントダウン(M89/M90銀河)_b0167343_3141197.jpg
(画像をクリックすると少し大きくなります)
2013年2月新月期 0:27 - 1:41 山梨県笛吹市
Nikon 8cm (f 1200mm) + Takahashi LE30 (30mm) 手動ガイドによるCanon PowerShot S95 コリメート撮影
No filter (露光時間40秒; ISO 1000) x 16コマ + (露光時間64秒; ISO 500-640) x 17コマ  全33コマ積算露光時間 29分 オート・ダーク減算 + Photoshop Elementsを用いてコンポジット+フラット補正+簡易星マスク+HDR処理


露光時間が短かった割には銀河の色調の違いも出ていて、そこそこの画像になった。

(撮影したメシエ天体 通算98/107個)

by Nikon8cmtelescope | 2013-03-23 23:13 | 星雲