アンタレス付近

パンスターズ彗星の北半球参上で、そこかしこにライブ感満載な観望記録が並ぶなかで、このところ1-2ヶ月前に撮影したライブ感に乏しい天体のアップが続いていたので、久しぶりにリアルタイムの画像をアップしたい。俄然夕刻の空が注目を集めるなか、明け方前の夜空では夏の星座たちが出番を迎えつつある。今回の画像は、全天で最もカラフルとされるアンタレス周辺を、ミニ・ボーグでコリメート撮影したものだ。

Nikon 8cmでコンデジのコリメート撮影でもメシエ天体が写るんだ!!と気がついて以来、手持ち撮影から、アダプターを使った撮影、さらにはガイド鏡を使った手動ガイド撮影と手法を進化させつつコツコツと撮影を積み重ね、残すところは春の銀河群となった。ところが、これが小口径望遠鏡にはなかなかの難物。星図を頼りに反転されたファインダーを覗き込んでの手導入が、目印となる明るい星に乏しい領域なので困難を極める。加えて、8cmという小口径で40倍という倍率の組み合わせでは、それぞれの対象は暗く小さくしか写らず、コンデジのバックモニターに写った姿を見ても、正直なところあまりテンションが上がらないのだ。

そんななか3月の新月期を迎え、メシエ天体制服の最後の追い込みのために出かけることにした。この週末の後半は初夏すら思わせるような暖かさから一転して冬型の気圧配置に変わり、八ヶ岳山麓はまだ季節風が強い。この冬に通った盆地東部の山間の小さな公園は、季節風の影響が少ないのだが、「クマに注意!!」の看板が掲げられている。このとろこの暖かさでクマが冬眠から目覚めたかなあ?なんて考えると、なんとなく行くのが不安になる。そこで、久しぶりに富士山麓に出かけることにした。クマが出る可能性はあるのだが、気温が低いぶんだけクマはまだオトナシイだろうと思うことにした。それに、同好の志もきっといるだろうから心強い。

ところが22時過ぎに現地に着いてみると、見事な星空にもかかわらずいつになく静かだ。まあ日曜の夜なので無理もない。1台だけ奥の方にいた同好の志と思われる車も、日付が変わるころには撤収された。とうとう一人っきり。しかし美しい星空の下にいると、クマへの不安は胸のなかで小さくなっていった。午前2時を過ぎると「さそり座」が富士山の裾野から昇ってきて、手招きをするようになった。午前3時には撤収しよう・・・と決めていたのだが、東の空にうっすらと見え始めた天の川の誘惑にはもう勝てなかった。空は真冬のように澄んでいて、以前から撮影してみたいと考えていたカラフルな領域を狙うにはうってつけの条件だ。

このところ小望遠鏡にとっては地味な天体ばかり追いかけていた反動が、睡眠時間を犠牲にしても撮影したい!!というエネルギーへと変換されてしまったようだ。ただ、薄明までに残された時間だけが懸念材料だった。大急ぎで、Nikon 8cmのガイド鏡に使っているミニ・ボーグからバローレンズを抜くと、30mmの接眼レンズを差し込んでコンデジを装着した。Nikon 8cm本体にアンタレスを導くと、ミニ・ボーグの視野の端にアンタレスとM4球状星団が入り込むように調整した。画角的には、ちょうどよい感じだ。さっそくに32秒露光で手動ガイドして撮影し、オートのダーク減算処理の時間ももどかしくコンデジのバック・モニターを覗き込んだ。

出てきた画像では、天の川本体から伸びてきた暗黒帯がV字を描くようにのたうっている様が、うっすらと確認できた。といこうことで、そこからは露光時間を32秒から64秒、80秒、101秒、128秒、161秒、203秒、256秒と1コマ毎に延ばしながら撮影していった。ところがダーク減算処理にも同じだけの時間がかかるので、256秒露光の撮影を終えた時点で時刻は4時半となってしまった。そこで今度は露光時間を短くしてコマ数を稼ぐことにして、40秒露光で撮影を重ねているうちに薄明を迎え、クマに出会わぬように大急ぎで撤収した。

こうして撮影した画像をフラット補正なしで処理したが、ISOを抑え気味にしたためか背景カブリは気にならない感じだ。視野ギリギリの斜め右上にはM80球状星団も入っていた。
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2013年3月新月期 3:46 - 4:55 山梨県富士山麓
ミニ・ボーグ 5cm (f 250mm) + Takahashi LE30 (30mm) 手動ガイドによるCanon PowerShot S95 コリメート撮影
No filter (露光時間32秒; ISO 1600-3200) x 2コマ + (露光時間40秒; ISO 500) x 8コマ + (露光時間64秒; ISO 400-800) x 5コマ + (露光時間80秒; ISO 500) x 1コマ + (露光時間101秒; ISO 320) x 1コマ + (露光時間128秒; ISO 200) x 2コマ + (露光時間161秒; ISO 160) x 1コマ + (露光時間203秒; ISO 160) x 1コマ + (露光時間256秒; ISO 125) x 1コマ 全22コマ積算露光時間 29分 
オート・ダーク減算 + Photoshop Elementsを用いてコンポジット+簡易星マスク+HDR処理


複雑に入り組む暗黒帯やアンタレスに重なるオレンジ色のガス像の片鱗は見て取れる。また、Al Niyatの周辺にも淡い赤いガスがあるのだが、それもうっすらと写っているようだ。この辺は、Canon PowerShotが赤に強いという特性が出ている。その一方で、この領域の美しさの根源とも言うべき青いガス像はほとんど出ておらず(輝星には青ハロが出ているのにネ・・・)カラフルとは言い難い仕上がりだ。ネット上で見られる画像と比べてみると、今回の画像ではM4球状星団の星の広がりが小さくて、カメラの感度の問題というよりも圧倒的な露光不足が否めないようだ。4月か5月の新月期で冷え込んで透明度の高い晩に、露光時間を可能であれば5分以上かけてじっくりコマ数を重ねてみたい。そうすれば、もう少しはカラフルに写すことができるのではないだろうか・・・。
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by Nikon8cmtelescope | 2013-03-13 02:07 | ミニ・ボーグの世界