カテゴリ:月・星のある風景( 77 )

春のアンタレスと銀河

さそり座の一等星アンタレスが南中するのは、夏の初めだと午後8時ごろだが、5月の連休だと夜半過ぎ、そして3月下旬だと薄明直前の時間帯になる。日中の暑さが残るなかで大気の揺らぎで燃えるように見えるアンタレスは、もちろん夏の夜空の主役であるが、明け方の冷え込みの厳しいこの時期に凛として見えるアンタレスも味わいがある。

3月25日の晩は、八ヶ岳周辺には季節風による雪雲が張り出してくる予報だったので、雲を避けるように富士山麓に出掛けた。南天のM83を撮影したら帰るつもりだったのが、澄み切った星空が名残惜しくて予定の時刻を過ぎてもなお撮影を続けていた。そして、我に返るとアンタレスが富士山の横で高度を増していた。大慌てで機材の撤収を始めたが、東の空から昇ってきた銀河があまりに見事だったので、ガイド鏡のミニ・ボーグを外した雲台にコンデジを据え付けてカメラを銀河の方向に適当に向けると、露光時間を30秒にISOを800と400にそれぞれ設定するとNikon 8cmをガイド鏡にして4コマずつ撮影した。それから大急ぎで富士山麓をあとにした。

撮影した8コマをコンポジット処理してみると、既に薄明をむかえていて銀河の東側の空は明るくなりかけていた。そして、肝心のアンタレスは端っこにギリギリで写っていて、反対側には立ち木が斜めに写りこんでいるという、なんとも中途半端な構図だった。それでも、銀河を分かつ暗黒帯の複雑な切れ込みが柔らかく写り、中でもアンタレスの方向に流れ込むように長く伸びていく様が捉えられている。
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ちなみに、この時の気温は氷点下7度。星像もシャープで、いかにも春の明け方らしい空だ。
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by Nikon8cmtelescope | 2012-03-31 17:22 | 月・星のある風景

カリフォルニアからの月食観望記

出張でアメリカ西海岸の都市に来ているため、時差の関係で月食は諦めていた。早起きは大の苦手なのだが、時差ボケのため12月10日の明け方に目が覚めたのは現地時間の午前4時半過ぎ。何気なく窓から外を見ると満月が見えるではないか。幸運にもホテルの部屋は西向きだったのだ。

そして目を凝らすと月の上半分が薄らと暗いような・・・・えっ!これって、もしかしたら半影食???。そして現地時間の午前4時45分に月は上から欠け始めた。日本との時差は17時間なので、時刻はまさに日本時間で21時45分。月食は日食と違って地球上の全ての場所で同時に始まることを実感した。

月は林立するビルの隙間の空に見えていて、食の進行とともに段々とビルに近付いていく。そしてととう皆既の直前に、上半分が赤味を帯び下端だけ白く輝いた月は高度を下げてビルに隠れていった。すると間もなく薄明を迎えた。

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重なった幸運に感謝しての観望だった。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-12-11 07:49 | 月・星のある風景

5分露光に挑戦

12月4日の日中は素晴らしい青空だった。南アルプスの山々もとうとう冠雪して白く輝いていた。月が沈む夜半過ぎには雲が増えるという予報だったが、深夜になっても比較的お天気が安定していたので思い切って出掛けることにした。時間も遅いので車で30分ほどの郊外の観望地を選んだ。

現地に着いたのは午前2時過ぎ。着いた時点ではほぼ無風だったのだが、望遠鏡を組み立てている間に季節風が吹き始め、時間とともに強さを増してきた。それとともに北の空からみるみる薄雲が伸びてきて空の半分を覆ってしまった。そうなると選択肢は、帰るか南天の対象を選ぶかの2つ。しかし何の収穫もなく帰るのはシャクなので、オリオン座を長時間露光でガイド撮影してみることにした。

今回は月明かりがないので、コンデジのレンズをズームで55mm(F値は3.2)にした上で露光時間を思い切って322秒設定にすると、手動ガイドした。ISOを最初は250にしたが、それではさすがに暗すぎたので400と500で撮影してみた。途中で薄雲が西の空まで伸びて写野の下側を被ってきただけでなく、時々オリオン座本体も非常に薄い雲に覆われることがあったが、そうやって撮影した4コマをコンポジットしてみた。

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前回の撮影は、下弦の月ではあるものの月明かりもあって露光時間を1分弱に設定せざるを得なかったが、それと比較すると今回はコンポジットした枚数は少ないにもかかわらず、バーナードループの存在がかなり明確になった。ここまで写るのであれば、夏の銀河など対象となる領域は多い。コンデジで直に撮影するのであれば追尾に高い精度は要求されず、多少は粗くガイドしても画像的には問題ないので、5分の手動ガイドもそれほど苦痛ではない。

5分間露光を試しているうちに、吹き続けていた季節風に強弱が出てきて、次第に風の間隔が開くようになってきた。そうなると、風の吹き始めと逆の順番で雲も減ってきた。いつの間にか時刻は午前4時を過ぎたが、こうなったら薄明までの時間に8cm本体でのコリメート撮影を1つやってから帰ろうと心を決めた。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-12-09 01:36 | 月・星のある風景

八ヶ岳おろしの季節

西高東低のいわゆる冬型の気圧配置になると、八ヶ岳から甲府盆地に向かって「八ヶ岳おろし」と呼ばれる北からの季節風が吹き下ろすようになる。とうとう11月20日の晩には、本格的な八ヶ岳おろしがやって来た。この風を避けるため、いつもより八ヶ岳から少し離れた観望地に出掛けたのだが、そこでも北風が吹いていた。

できれば久しぶりにNikon 8cm本体でのコリメート撮影をやろうと思っていたのだが、望遠鏡が風にあおられて星が視野の中で躍っていた。そこで、ミニ・ボーグでのコリメートに切り替えてみたのだが、バックモニターで撮影したコマを拡大して確認すると、星が肥大して写っていた。

それならと、赤道儀の上に自由雲台を取り付けてデジカメ本体でガイド撮影することにした。できれば数分の露光時間を試してみたかったが、すでに月の出の時刻だったので、コンデジの露光時間は50秒と短めに設定した。コンデジ本来の28mmだと広角過ぎて望遠鏡まで写りこんでしまったので、ズームを35mmに切り替えた。そして、ISOを1250で5コマ、800で10コマ、640で5コマ撮影した。コンデジ自体での撮影なら、ガイドが多少粗かろうが問題はないので、随分と手動ガイドも楽だった。これなら、数分の露光時間でも手動ガイドに体が耐えられそうだ。

20コマをコンポジットしてみると、オリオン大星雲はもちろん、火焔星雲や馬頭星雲、はたまたバラ星雲やバーナードループの存在も淡いながらも確認出来て、これはこれで、なかなか面白そうだ。コンデジの長秒露光での天体写真のレパートリーが、また1つ増えたことになる。特に、これから八ヶ岳おろしが本格化してきて風が強い夜であっても、撮影を楽しむことができるのは嬉しい。

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考えてみると、オリオン座をガイド撮影したのは天文少年の頃以来ということになる。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-11-24 02:45 | 月・星のある風景

標高1700メートルからの黎明

9月19日の明け方に、標高1700メートルから見た東の空。

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空には星が見えているのに、御坂山系の上に美しい朝焼けが現れた。下界には盆地の街灯りと雲海が見えている。

コンデジのF値は2.5でISOは800と抑えて、露光時間を2.5秒に設定して撮影した10コマを比較明処理した。

東の空に昇ってきたのは「しし座」の頭部。春の星座が早くも出番を待っていた。

「しし座」が夜空の主役になる頃には、どんな写真を撮っているのだろうか。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-09-25 22:34 | 月・星のある風景

雲間のカシオペヤ

新月期が近付いてくると、お天気が気になって仕方がない。頭の中には、簡易手動追尾で撮影してみたい対象や、ドブソニアン望遠鏡でじっくりと眺めてみたい対象が一杯だ。ところが、連日の不安定な天候である。

悶々としているくらいなら出掛けてしまえと、8月25日の深夜に八ヶ岳山麓に向かった。ところが、着いてみると、やっぱり曇っていた。しかし、割とサラッとした爽やかな風が吹いていて雲がゆっくりと動いている。とりあえず望遠鏡の架台だけ組み立てると、のんびりと夜風に吹かれていた。

しばらくすると、西の空に夏の大三角が雲間から切れ切れに見えるようなって、晴れ間が次第に天頂方向に移動してきた。双眼鏡で雲間の星々を拾うようにして眺めていると、カシオペヤのW字が姿を現した。カシオペヤから二重星団を経てペルセウスの星々と重なって、どうやら銀河も見えている。雲が晴れれば、なかなかの星空が期待できそうだ。写真は、その様子をコンデジで6秒露光で撮影し、12コマを星の位置を基準にコンポジットしたものだ。

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ところが望遠鏡を出すまでもなく一瞬で星空は消えてしまい、夢を見ていたのではないかと思われるように完全に曇り空に戻ってしまった。辺りには秋の虫の音がしんみりと響き渡っている。

なんとなく納得したような気分になり、機材をしまうと家路についた。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-08-27 13:10 | 月・星のある風景

梅雨明けは近い!?

7月5日は日中から素晴らしい青空だった。GPV気象予報では、22時ごろからは雲が出てきて次第に広がるという。集中して仕事を片付けると夕食も急いで済ませ、ドブソニアン望遠鏡を車に積んで八ヶ岳山麓に向かった。現地到着は21時少し前で、月が沈みかけていた。双眼鏡であちこち眺めながら、望遠鏡の鏡が外気温に馴染むのを待っているうちに、月が沈んで素晴らしい星空になり、ドブソニアンで夏の星雲・星団を巡った。

b0167343_1372676.jpg予報より少し遅れて23時過ぎに北西から雲が広がってきた。一応は満足して帰えるつもりでいたが、なんとなく往生際悪くしていると、雲は南下して再び星空が広がった。するとどうだろう。南の低空に残った雲が街灯りを吸収してくれて、銀河が真っすぐに立っている様子がクッキリと夜空に浮かびあがった。

コンデジを三脚に付けると、ISOは2000とやや抑え気味にして、露光時間を6秒に設定して、ドブソニアンと一緒に銀河の前で記念撮影をしてみた。連続撮影した8コマをコンポジット処理してみたところ、銀河を複雑に分かつ暗黒帯も鮮明に浮かび上がってきた。

夏近し、そんな記念撮影になった。彦星と織姫星は写っていないが、ちなみに今日は新暦の七夕。梅雨空の上では美しい銀河が本格的な夏空を待ってくれている。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-07-07 01:42 | 月・星のある風景

ホトトギスの鳴く夜

5月14日の晩に薄明迫るなかでM20を撮影していた時に、急に森からホトトギスの声が聞こえて、最早これまでと悟り撮影を終えた。ところが機材を片付けている間も相変わらずクッキリと見えている天の川に、撤収が少し早すぎたかなあという印象は拭えなかった。それでも、微かな朝の気配を感じとって時を告げるホトトギスに感心したのだった。

6月3日の晩は、5月14日の晩と同じ場所で霧が晴れるのを待っていた。雨雲が東南の空に去って一度は満天の星空になったのだが、それから30分もしないうちに下界から山肌をなめるように霧が昇って来た。しかたなく雲間から見える星をぼんやりと眺めていると、森の奥からホトトギスの声が聞こえてきた。まさかと思ったが、同じ鳥が移動したのか別の鳥が呼応したのかは定かではないが、今度は随分と近くからまた鳴き声が聞こえてきた。

時刻は午前1時前で、薄明まではまだ2時間近くあるはずだった。はじめは寝ぼけたか慌て者のホトトギスが「朝が来た!」と勘違いして鳴いたのだろうと思ったが、それからも遠くなり近くなりしながら断続的に森の中から爽やかな鳴き声が聞こえた。もう、ホトトギスの鳴き声が朝の到来を告げるものではないことは明らかだった。

インターネットで調べたら、古来から夜にホトトギスの声を聞くことを風流人が競って楽しんできたことが書かれていた。そして夜のホトトギスは歌にもたくさん詠まれているのだそうだ。以下は枕草子の三十九段を引用。
 ほととぎすは、なほさらにいふべきかたなし。
 いつしかしたりがほにもきこえたるに、卯の花、花橘などに宿りをしてはたかくれたるも、ねたげなる心ばへなり。
 五月雨の短き夜に寝ざめをして、いかで人よりさきに聞かむと待たれて、夜深くうち出でたる声のらうらうじう愛敬づきたる、いみじう心あくがれせむ方なし。
 みなづきになりぬれば、音もせずなりぬる、すべて言ふもおろかなり。
ということで、どうも旧暦で6月になるとホトトギスはあまり鳴かなくなるらしいので、そのホトトギスの声を聞きながら満天の星を味わったのだから、貴重な夜を過ごしたと言えなくもない。

そしてホトトギスが鳴く中で薄明を迎えたのだが、今度は南の空にまだクッキリと見えている天の川をコンデジで撮影してみた。ISOは3200で露光時間を2.5秒に設定して撮影した5コマをコンポジット処理したが、横たわった「さそり座」の尻尾から「いて座」の柄杓にかけて銀河が写り、銀河を境にするかのように東側の空が少し青味を帯びはじめている。望遠鏡の脇には緩やかに弧を描く「みなみのかんむり座」の可愛らしい星の並びも見えている。

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遠くの街路灯を受けて白く光る望遠鏡の横にたたずむ黒い影は、ホトトギスの声に聞き惚れる着膨れした風流人!?。そこで駄句を一つ
 鳴かぬなら 星空仰げ ホトトギス
おそまつ。

追伸
この記事へのアクセスを巡って、ホトトギスの初鳴きとの関連性を、以下の記事で考えてみましたので、興味のある方はどうぞ。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-06-10 00:17 | 月・星のある風景

久しぶりの星空

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早々に入梅して、部屋の隅に出しっぱなしになっている望遠鏡の箱は、猫の所属物になってしまったようだ。長く居座る訳ではないが、近くを通ると箱の角に体をこすりつけて一応は上に乗って横になってみる。どうも、所有権を主張しているらしい。あるいは爪研ぎの箱の前に置いたので、邪魔だと怒っているのかも知れない。

そんな望遠鏡だったが、6月3日の晩に久しぶりに八ヶ岳山麓で夏の星雲・星団を楽しむことができた。梅雨入り前に撮影した写真のストックが尽きかけていたので、これでしばらくは晴れない夜も写真のコンポジット処理を楽しむことができる。

帰って来てから、望遠鏡が本格的に猫の所有物になってしまわぬように箱は猫の邪魔にならない場所に片付けた。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-06-05 12:31 | 月・星のある風景

元気のもと

星を眺めていると疲れも吹き飛ぶし、望遠鏡を出せば全てを忘れて星の世界に没頭できる。

でも自分にとって一番の元気のもとは富士山ではないかと思う。

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いつも星を見に出かける八ヶ岳山麓からは、盆地の山の向こうに小さく品の良い富士山の姿が見える。今日はたまたま仕事で八ヶ岳山麓に出かけたのだが、麗らかな晴天のもとでその上品な姿が遠くに見えたのでデジカメに収めた。

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冬の間はクッキリと見える富士山の稜線が、春になると曖昧になってくる。雪のない下の方は青空と渾然一体となってしまい、冠雪した上の白い部分だけが浮き出したようなこの姿こそが、自分にとっては何よりも春の到来を実感させてくれる。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-04-15 00:56 | 月・星のある風景