月の雫(その2)

今になって考えてみると、「月の雫」は製法から考えても当時は秋だけ手に入るものだったに違いない。季節感のある土産として、祖母はわざわざ求めて来てくれたのだと思う。そんな祖母の気持ちに応えて、父は喜んで食べていたのではなかったか。厳しかったが、そんな優しさを持った人だった。

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二人とも遠に他界していて確かめようもないが、祖母は祖母で孫の私達よりも父の喜ぶ様子を楽しみに、土産にしていたのではなかったか。そう言えば、祖母が好きだからと言っては、祖母が来るとよく父がわざわざ練り雲丹を買ってきた。

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晩年の祖母は軽い痴ほうが出た。すでに父は亡くなっていたが、それを祖母は信じていなかった。母に「最近見ないがどうしたのか?」と、よく父の消息を尋ねた。そして、亡くなったと聞くとその度に絶句しては涙を流した。

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そんな記憶を巡りながら月を撮影していたら、久しぶりに「月の雫」を食べてみたくなった。大人になって口にすると違う味わいがあるのかも知れない。その一方で記憶の中だけに止めておいた方がいいかも、という気もしないでもない。季節的には旬のはずだが、どうしたものだろう。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-31 11:49 |

月の雫(その1)

27日の夜に空を見上げると、半月をやや過ぎた月の真下に木星が輝いていた。木星の輝きは、まるで月から光が雫となって滴り落ちたかのようだった。その様子に、平日ではあったが望遠鏡を出した。

b0167343_21253254.jpg台風が太平洋岸を駆け抜けていった後の割には気流が落ち着いていたが、木星は気流の中を泳いでいて縞模様の細部まで見えるような状況ではなかった。そこで月に望遠鏡を向けた。低倍率であれば気流の影響はそれほど気にならなかったので、いつものようにデジカメで撮影をはじめた。

「月の雫」と言えば、生の甲州葡萄の粒を皮ごとそのままに白糖で覆った甲州名物の菓子の名前でもある。子供の頃に母方の祖母が「月の雫」をときどき持って来てくれた。見た目の美しさと珍しさに惹かれて口に入れてはみるが、白糖の強い甘さと甲州葡萄を皮ごと食べることへの抵抗感からか、1つか2つ口にしておしまいだった。その「月の雫」を父が喜んで食べていた。

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確かに父は果物が好きで、酒が飲めない代りに晩酌だと言っては季節の果物を食べていた。その一方で、甘い菓子は滅多に口にすることはなかった。そんな父が、いくら果物好きとは言え白糖で覆われた「月の雫」を喜んで口にするのを、子供心に意外な気持ちで半ば呆れるように見ていた。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-29 21:29 |

ぎょしゃ座の散開星団

夜半には「ぎょしゃ座」が空高く昇るようになってきた。ぎょしゃ座には、小型望遠鏡での観察に手頃な散開星団が幾つかあるので、手持ちコンパクト・デジカメ撮影の限界を確認するのにはもってこいだ。18日の晩は空の透明度が高く、気流もまずまずだったので、M36、M37、M38の3つの散開星団に望遠鏡を向けると、ISO1200、露出1秒の条件で撮影した。

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まずM36であるが、星団の中でひと際明るい数個の星は容易に写って、肉眼で見たスバル星団のような感じの写真になった。それ以外の星団を構成する星々は8コマのコンポジットでも背景のノイズに埋もれてしまい、残念ながら星団としての美しさは写真ではあまり感じられない。

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次にM37である。3つの星団の中では、星の明るさが最も揃った星団で目視では非常に美しい。しかし個々の星が比較的暗いので、コンポジットしてもノイズと区別できなかった。残念。

最後にM38であるが、十文字の独特な星の並びはコンポジットでわかるようになったが、これも目視での美しさにはとうてい及ばない。もう少し暗い星まで写らないと星団としての迫力や美しさは引き出せないようだ。

b0167343_1403139.jpgM42オリオン星雲にも望遠鏡を向けた。13コマのコンポジットであるが、前回よりも今回の方が暗黒帯の切れ込みがシャープで、鳥が羽を広げたような形も良く写り、色調もイメージに近いように思う。

(撮影したメシエ天体 通算7/107個)
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-27 01:45 | 星団

オリオン座流星群

このところ晴天が続いていて、夜半過ぎには夜空を見上げて流星を数えた。20日の晩は1時間余りで3つを数えた。もっとも、半分位の時間は双眼鏡で眺めていたので見逃した流星もあったはずだ。

21日の晩には、職場からの帰り道に10分ほど歩く僅かな間に3つを数えたので、そのままデジカメを出して自家用車の屋根に置き撮影してみた。ところが、カメラを構えるとなかなか流れない。30秒の露出で何コマも撮影したが流れなかった。今度流れなかったら止めようと思うのだが、次こそ流れそうな気がしてなかなか止められない。

そんなことを数回繰り返していると、まるでオリオンが矢を放ったかのようにオリオン座から西の方向に流星が現れた。急いでデジカメのモニターで確認すると、飛跡のうち特に明るく輝いた一部分だけが、かろうじて写っていた。放射点からオリオン座流星群の流星で間違いないだろう。

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オリオン座流星群のもとになった彗星は、有名なハレー彗星だという。学生時代に迎えた回帰は少々期待はずれだったが、次の回帰は2061年だから再会を望むべくもない。オリオン座流星群を見上げながらハレー彗星と1986年当時に思いを馳せた。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-23 00:48 | 月・星のある風景

コスモスはCOSMOS

2-3週間ほど前に、出先へ向かう朝の車でラジオを聞いていたら、「コスモスの花の真ん中には星がある!!」と園芸家の柳生真吾さんが力を込めて話していた。曰く、「ミツバチにでもなった気持ちで、デジカメの接写機能を使ってコスモスの花を写真にしてみたら、大発見! そこには沢山の星が写っていたんです。」「考えてみれば、コスモスはCOSMOS! そう、宇宙じゃあないですか!!!」

この話を聞いたら、どんな事をしても見てみたいと思うのが人情、まして星の写真を撮っている身としては放っておく訳にはいかない。しかし、身の回りにコスモスはありそうでなかなか見つからない。そうこうするうちに、また出先に向かう日がやってきた。そうだ、出先の駐車場の周りにコスモスの花が咲いていたような気がする。という訳で、カバンにデジカメをしのばせると期待に胸を膨らませて出先に向かった。

出先に着くと、はたして赤やピンクのコスモスが咲いている。はやる気持ちを抑えて所用を済ませると、帰り際にデジカメを持ち出した。周囲の目を少し気にしながら花に鼻をすり付けるようにして見てみると、確かに星がある。実はこの星型の部分が「筒状花」と呼ばれる本当のコスモスの花で、大きな花びらは一番外側の筒状花が形を変えたものなのだそうだ。筒状花は、蕾も花もメシベも全て星の形をしているのが面白い。

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コスモスの花の名は、花ビラが整然と規則正しく並んでいることからギリシャ語で宇宙の語源でもあるKosmosになったらしい。花のコスモスと宇宙のCosmosとを結びつけたことなど今までただの一度もなかったが、考えてみると気付いていなかった事が不思議でならない。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-20 02:05

アリスタルコス

15日は、明け方が近づくと再び雲が増えてオリオン座を取り囲むように広がっていった。東の空には大部細くなった月が赤銅色を帯びて昇ってきている。望遠鏡を向けると、満月の時に眩いばかりの存在感を放っていたアリスタルコスが、欠け際にポツンと見えている。満月の頃の輝きは一体何だったのだろうかと思うぐらいに寂寥としている。

b0167343_21281687.jpg月の高度が低い割には気流の影響が少なく、アリスタルコスから蛇行して伸びる起伏と、黒い糸くずのにように細くて長いシュレーター谷が、目視ではよく見えている(月周回衛星「かぐや」からの動画)。しかし写真に撮ろうと構えると、雲がかかったり庭のケヤキの小枝が邪魔したりして、思うようにいかない。そんな訳で、シュレーター谷は写真では流れてしまって、はっきりと捉えることができなかった。

b0167343_21284473.jpgアリスタルコスは、クレーターの壁が他のクレーターに比べると随分と厚く見えて外側に長く影を引いている。まるで穴の大きなドーナツかベーグルのような印象だ。おまけに周囲には黒く「嵐の大洋」が広がっている。この厚い壁と取り囲む海の部分とのコントラストが相まって、満月になると眩い光を放つのだろう。

いつの間にか空が白んできた。飼ネコが起きてきて不思議そうに窓からこちらを見ている。望遠鏡を片付け終える頃には、早起きの家内は家事を始め、定期試験中の息子も早起きして一夜漬けならぬ一朝漬けに励んでいた。そんな中で、少しきまりが悪い思いをしながらコソコソと布団にもぐり込んだ。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-19 21:33 |

冬の気配

先週末に義父が亡くなった。この日が遠からず来るだろうことは感じていたが、一陣の風のように旅立っていった。山麓の街ではもう紅葉が始まっていて、薄らと冠雪した富士が大きく凛とそびえていた。深夜に外に出ると、引き締まった夜空にオリオンが昇っていた。秋とは冬の序章であることが実感させられた。

週が明けて普通の生活に戻ったものの、どこか重いものを背負っているような感じでいた。そんなためか、水曜日の晩は夕食を終えると、季節外れの雷雨の気配を感じながら居間で眠ってしまった。夜半に目覚めて、残した仕事を片付けに職場に戻る時には、雲の間から星が少しだけ見えていた。

最小限の夜なべ仕事を終えて再び家路につく頃には、街灯の上に星空が半分ほど広がっていた。家に戻って寝間着になり部屋の電気を消すと、窓からオリオン座のリゲルが見えた。上着を羽織って外に出てみると、少しの間に大きく晴れ間が広がっていた。

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望遠鏡を出すと、直ぐにオリオン星雲に向けた。トラペジウムを包むようにベール状の星雲が広がっており、星雲は紫がかった淡いピンク色を帯びていることが肉眼でも感じられる。デジカメのISOを上限の1250に、露出時間も上限の1秒にそれぞれ設定すると、いつものように接眼レンズにデジカメを押し付けて手持ちで撮影してみた。

b0167343_9513022.jpg1秒間の露出だとトラペジウムの星々は流れてしまって一塊になっているが、カメラのモニターでも星雲が確認できた。そこで、16コマを選んでコンポジットしてみた。さすがにトラペジウム周辺の明るい部分しか写っていないが、それでも星雲の美しさの片鱗は見て取れる。

オリオン星雲では星が次々に誕生しており、トラペジウムを形成する若い星々が誕生したのは、数十万年前と考えられているらしい。それと比べると人間の生涯はあまりにも短い。しかし、私達は星から生まれて、いずれ星に帰っていく。オリオン星雲をながめていると、短い人間の生涯も悠久とも思える宇宙の営みの一部であることが自然と受け止められた。

(撮影したメシエ天体 通算5/107個)
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-17 09:57 | 星雲

ホワイト・バランス

木星の大赤斑を捉えるには、デジカメのホワイト・バランスも重要なのではと考えて、テストの機会をうかがっていた。4日の宵は、ちょうど大赤斑が見えるはずなので、木星が晴れ間に出てきたところで望遠鏡を向けてみた。

雲の動きから予想された通り気流の影響が強く、木星の辺縁もユラユラして見えて条件はあまり良くない。どう目を凝らしても、目視で大赤斑の存在は確認できなかった。それでもカメラにあらかじめ設定されている4種類のホワイト・バランスで撮影してみた。

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一番良さそうなコマを白黒に変換したものと組み写真にしてみた。コマごとに気流の影響や手ブレの度合いが異なるので、これだけで一概には結論できないが、「晴天」が一番目視に近いものの、白黒で比較してみると「曇天」が縞模様のコントラストが一番はっきりしている印象だ。この2種類の条件で撮影したコマをコンポジットするといいかも知れない。

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時間が経っても気流は良くならないので、木星の撮影は早々に切り上げた。最後に雲のかからない満月を撮影した。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-14 00:00 | 惑星

航跡を追う

b0167343_22532666.jpg4日の夕方も望遠鏡を出した。前日と同様に東の空には雲が多く、満月が姿を現したが直ぐにまた雲に隠れてしまった。

木星も雲に出たり入ったりしていて、完全に晴れ間に出るまではもう少し時間がかかりそうだ。さて、どうしたものかと思って空をながめていると、飛行機が東から西へと次々に飛んで行く。羽田から西日本に向かう便だろう。それならと望遠鏡を飛行機に向けて見た。

ファンダーで飛行機の進行方向に狙いを定めて望遠鏡を固定し、急いで接眼レンズを覗くが、飛行機はすぐに視野から出てしまう。そんな追いかけっこを何機かと繰り返しているうちに、だんだんコツが呑み込めてきた。

b0167343_22533912.jpg満月の撮影に合わせてISOを100に設定したままで、スローシャッターの設定が1秒だったので、露出時間が結果的に1秒になってしまった。そのため機影はわからないが点滅する航行灯から航跡がわかる。連続した4コマをコンポジットしてみた。

こうして飛行機を望遠鏡で追いかけていると、たくさんの人が中に乗っていることが不思議に思えてくる。雲の上を飛んでいる飛行機からは、満月も木星もよく見えるはずだが、窓からながめている人はいたのだろうか。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-06 00:05 |

仲秋の名月(その2)

東の空で雲の上にポッカリと顔を出した月だったが、その後は雲に出たり入ったりしながら少しずつ高度を上げて、次第にオレンジから白っぽくなっていった。

望遠鏡で追いかけるが、月が雲間に現れても月の一部に絶えず雲がかかっている。途中からは、雲に一部が隠されているのを承知で月の姿を写真に撮った。

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実際には電線や近所の屋根があってゴチャゴチャしているのだが、望遠鏡の視野の中は雲と月だけの静寂な世界だ。雲がかかっている方がかえって秋らしく、仲秋の名月の鑑賞には相応しようにも思える。

b0167343_23461019.jpg月面では、「嵐の大洋」の中でアリスタルコスがひと際輝いて見える。小さなクレーターなのに、満月前後になると目立った存在になるのが不思議だ。雲に覆われても、その存在感は際立っている。

あたりがすっかり暗くなったころには、空全体に雲が広がって月は完全に隠れてしまった。風に当たったせいだろうか、少し咳が出始めたので、お月見を打ち切って家に入った。
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by Nikon8cmtelescope | 2009-10-05 00:03 |