星空を求めて(その4)

半袖では寒くてサマーセーターを重ね着した。山荘にでも合宿している若者達だろうか、遠くから歓声が時々聞こえていたが、夜が更けるにつれて静かになった。すると時折周囲の林から鹿の甲高い声が聞こえて来る。自宅の周辺だと、立秋を半月あまり過ぎても遠慮がちに鳴くコオロギの声以外にはほとんど感じられない秋の気配が、ここでは圧倒的な勢いで迫ってきた。

望遠鏡が使えなくなったので、肉眼と双眼鏡で星空を散歩でもするようにゆっくりと眺める。思えば自宅だと条件の良い晩は星図と首っ引きで望遠鏡を次々にメシエ天体に向けてはデジカメに収めるという、まるでガイド・ブック片手に名所を次々に駆け回る旅行のような慌ただしい楽しみ方だった。じっくり眺めるよりもカメラに収めることが優先で次へと急ぐ様は、まさに観光ツアーのようだった。

しかし、ここでは双眼鏡を向けるだけで次々に星団や星雲が見えてくる。その1つ1つに立ち止まっては心ゆくまで眺めていると、宇宙と対話しているような気分になる。そうは言っても、美しい星雲・星団に望遠鏡を向けられないのは何とも口惜しいのだが・・・。

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二重星団やアンドロメダ銀河が浮かぶ辺りに望遠鏡の代りにデジカメを向けた。15秒の固定撮影を10コマでコンポジット処理したが、中央からやや左上の天の川が淡くなった辺りに小さくM31アンドロメダ銀河が写っている。地上の景色が入っていないので、隣の銀河であるM31がたくさんの星の向こうに見える様には、宇宙の奥行きが感じられる。じっと見ていると、銀河を透かして遠くのアンドロメダ銀河を眺めているような錯覚に陥るが、これは錯覚ではない。星空を見ることは宇宙を眺めることなのだと実感できる写真だ。
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-31 00:16 | 月・星のある風景

星空を求めて(その3)

望遠鏡を据えると早速に星雲・星団に向けた。星雲や星団が漆黒の世界を背景に浮かび上がる様は、街灯りがある自宅のベランダからは味わえない。喜々として視野に導いてはデジカメで手持ち撮影した。ところが、しばらくすると何か様子がおかしい。素晴らしい星空が相変わらず広がっているにもかかわらず、望遠鏡の視野にある対象が次第に暗くなってきたのだった。

慌てて鏡筒に触れてみるとビッシリと露が付いている。おそらく対物レンズも同じように結露してきているのだろう。自宅のベランダでは結露に悩まされることは滅多にないが、暖まった車中から望遠鏡を急に出したので結露してしまったのだろうか。風がほとんどない好条件も結露の誘因の1つになったのだろう。

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幸いデジカメは結露していなかったので、西の空に頭から沈みつつある「はくちょう座」にカメラを向けて固定撮影した。15秒露出で撮影した10コマを星に合わせてコンポジットしたが、星座を形作る星々を見つけるのが難しいほど沢山の星が写っている。「はくちょう座」のデネブの近くには北アメリカ星雲も赤味を帯びて写っていて、涼やかな秋の銀河に暗黒帯が散在する様が美しい。
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-29 00:16 | 月・星のある風景

星空を求めて(その2)

車のシートに横になって晴れるのを待つが、その気配はない。冴えた月を眺めることが出来ただけでも幸せと、望遠鏡を車に積むと林道を下りはじめた。途中少しでも空が開けた場所があると車を止めて空を確認するが晴れる気配がないまま、とうとう麓まで下ってきてしまった。

盆地に戻ってくると、どんよりとした曇り空はそのままで日中の暑さが逃げずにこもっていた。しかし一瞬だけ雲間から月明かりが射した時に、雲が低空にあることがうかがえた。それならと今度は八ヶ岳山麓を目指した。

8月はじめにTさんと天の川を見た標高1100メートルあたりまで来ると晴れ間が見えはじめ、高度を上げるにつれて晴れ間が増えてきて、標高1600メートルの林道の終点に近い地点まで来るとすっかり晴れ上がった。見渡す限り雲はなく、月が沈むと満天の星空に秋の天の川がクッキリと見えるようになった。

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デジカメを天の川に向けてISOを3200に設定して15秒露出で固定撮影した12コマを、星にあわせてコンポジットした。合計で200キロメートル近くを走った末にようやく見ることが出来た星空だ。
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-27 00:09 | 月・星のある風景

星空を求めて(その1)

猛暑は続くものの夜はすっきり晴れない天気が続いて久しい。あるいは標高が高い場所なら晴れているのではと、それなら富士山に行ってみようかと思いついた。上弦過ぎの月があるが、透明度の高い場所なら月明かりがあっても自宅のベランダで見るよりは条件は良かろう。8月21日の夕方、望遠鏡を車に積み込むと陽が落ちてどんより曇り星1つ見えない猛暑の盆地をあとにした。

山麓から林道に入るころになると月と木星が雲間から見え出した。五合目から山頂へと続く山小屋の灯りは見えないので、雲は五合目より下にかかっていることになる。それなら上は晴れているかも知れない。道に覆いかぶさるように木が茂った林道からはほとんど空は見えないが、高度が上がるにつれて次第に雲間から山小屋の灯りが見え出した。四合目に相当する標高1800メートルの林道の終点に着いて車を降りてみると、南側半分は晴れていて月の光が眩いばかりだ。望遠鏡を据えて北側の空が晴れるのを待つが、期待に反して雲は徐々に増えてきた。

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b0167343_0132089.jpgそこでデジカメを富士山に向けて南西の空を撮影してみた。明るい月明かりで露出時間を2秒に設定しても昼間のように空が明るく写る。そんな写真を4コマ選び星にあわせてコンポジットしてみた。雲はさらに広がり、仕方がないので望遠鏡を富士山に向けて、登山する人々の光の行列を手持ち撮影し時間を潰すが、とうとう富士山も雲に覆われて山小屋の灯りも見えなくなってしまった。
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-25 02:54 | 月・星のある風景

消えた縞模様

木星と言えば縞模様だが、その縞模様の1本がほぼ消えかけているという。そのニュースを目にしてから気になっていたが、なかなか見るチャンスがなかった。また望遠鏡を向けても、それと確認できるような条件にも恵まれなかった。

その木星が夜半過ぎに南天高く輝くようになって観望期を迎えた。そこで8月4日の晩にメシエ天体を眺める合間に木星にも望遠鏡を向けてみた。透明度が高い上に気流も安定しており、星雲・星団の観望はもちろん惑星の観望にも絶好の条件だ。折からガリレオ衛星の1つイオが木星の前面から廻り込もうというところで、木星本体に接するように見えている。

b0167343_1333039.jpg接眼レンズはOr 18mmとし、デジカメはLumixでISOは100で露出時間は1/8秒さらにズームを3倍に設定して手持ち撮影した。約8分間で集中的に撮影した60コマから16コマを選んでコンポジットした。昨年夏に撮影したものと並べてみたが、たしかに赤道をはさんで存在する2本の太い縞模様のうち1本がほとんど消えかけている。この消失しかけている縞模様は南赤道縞と呼ばれ今までにも時々淡化しているそうで、この縞が淡化する時には大赤斑は逆に濃化する傾向にあるということだ。

昨シーズンは大赤斑を捉えることができなかったが、今シーズンはチャンスだと言える。お天気と木星の自転の組み合わせを確認しながら、大赤斑の手持ち撮影を試みたいと思う。
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-22 13:06 | 惑星

格さん助さん(その3 M110)

b0167343_1422897.jpg今度はM31本体を視野から追い出して、M110を視野の中心に置いて改めて撮影してみた。いくらか存在感は増すものの、淡い光芒であることに変わりはない。それでも、中心部から横に長く非常に淡い広がりがあって銀河の特徴を有していることが何とかわかる。

このM110は、メシエ自身はカタログにリスト・アップしていなかったものを、メシエが残したM31のスケッチにM32とともに書き残されていたことから、1960年代になってメシエ・カタログに加えられたそうだ。

メシエ・カタログはメシエが彗星と紛らわしい天体をリスト・アップしたもので、その彼が数えていないものをメシエ天体に入れることに個人的には若干の違和感があるが、小望遠鏡で見える対象であることは確かなので、ここでもM110とした。それにしてもM32をリストに入れたメシエが、M110をスケッチに残しながらなぜリストに入れなかったのだろうか。
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-20 01:43 | 星雲

格さん助さん(その2 M110)

M32の反対側で少し離れてM31に従うM110は、M32よりも一回り大きく伴星雲と呼ぶに相応しい感じがする。ところが、望遠鏡でM32と反対側を眺めても、それらしい姿はなかなか見つからない。そこでM31を視野の端に追いやって丁寧に探してみるが、やっぱり見つからない。

直視しないよう注意しながら、諦めずに見当を付けたあたりを何度か見ているうちに、視野の片隅に淡い光があるのに気が付いた。M31の明るい光芒から思ったよりも離れていて、眼視する限りはM31の伴星雲という感じはあまりしない。

b0167343_2311763.jpgM31を視野の端にして、ISOは3200で露出を2.5秒に設定して撮影した16コマをコンポジットしてみた。非常に淡い光芒がM31の長軸と直交する向きで視野の端に写っているのが何とか認められる。

長時間露出で撮影した写真では、M110はM31銀河の忠実な家来といった感じで写るのだが、この写真ではM31本体の明るい光のゴーストといった感じだ。

(手持ち撮影したメシエ天体 通算69/107個)
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-17 02:32 | 星雲

格さん助さん(その1 M32)

M31アンドロメダ銀河に寄り添う2 つの小さな銀河星雲がメシエ天体にリスト・アップされている。M31の本体に近いM32と、M31から少し離れたM110だ。その様子は水戸光国公に寄り添う格さん・助さんといった風情だ。

M31に望遠鏡を向けて25mmの接眼レンズで見ると、眩いばかりのM31銀河の中心部と同一視野にM32が入ってくる。ちょうど同じくらいの明るさの星が幾つか近くにあるが、それらの星に比べるとボンヤリと面積を持っており、どちらかというと密集度の高い球状星団を見ている感じに近い。

b0167343_23133882.jpgM31を視野の端に追いやってM32を中心に置くと、ISOは3200で露出を2.5秒に設定して撮影した16コマをコンポジットしてみた。映像にしてみても、やはり銀河というよりは球状星団のような感じだ。

伴星雲と言えば聞こえはいいが、この2つの銀河はM31本体に吸収される過程にあると言う。特にM32はガスなどの成分は既に吸い取られて、星のみが残った状態にあるらしい。どうやら格さん・助さん、黄門様に心酔し過ぎて魂を抜かれてしまったようだ。

(手持ち撮影したメシエ天体 通算68/107個)
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-14 23:16 | 星雲

夏の球状星団(その24-M75)

7月18日の晩も望遠鏡を出した。望遠鏡を出した直後は「さそり座」から「いて座」にかけての空が晴れていたので、まずはM55に望遠鏡を向けようと方向を定めている間に、低い空に雲が出て来てしまった。そこで、雲から逃れるように望遠鏡をM55から少し北に振って「いて座」のM75球状星団に望遠鏡を向けた。

M75の光度は8.6等と球状星団としてはかなり暗い方に入るのだが、眼視でも芯を持った小さな光芒がはっきりと見えた。それもそのはず、M75は球状星団として最も密度が高く密集度がIに分類されている。

b0167343_353828.jpgところが、いよいよカメラに収めようとする頃になって、雲がかかるようになってしまった。星団が雲間に顔を出すタイミングをはかってISOを3200に設定し露出は2.5秒で手持ち撮影を始めたが、しばらくするうちに完全に雲に覆われてしまった。なんとか撮影できた11コマでコンポジットしてみたが、追い立てられるように写真を撮ったので視野の中心からズレたコマも多く、かなりひどい写真になってしまった。それでも星の密集度が高いことは見てとれる。

これで「いて座」にある7つの球状星団を一通り巡ったことになる。

(手持ち撮影したメシエ天体 通算67/107個)
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-13 03:56 | 星団

1年間でここまで来た・・・

天文雑誌に投稿するのに、代表的な散光星雲、銀河星雲、球状星団、散開星団、惑星状星雲を組写真にしようと考えた。研究会の発表では惑星状星雲はM97ふくろう星雲M57リング星雲を選んだのだが、前者はいかにも淡い。そこで、M97の代りにM27亜鈴状星雲を入れようと撮影の機会をうかがっていた。梅雨まっ盛りの6月ではあったが、運良く6月14日の晩にチャンスが訪れた。夜半過ぎにスッキリと晴れ上がったのだ。

M27と言えば、昨年の夏にたまたま手持ち撮影で写りビックリして以来の再会だ。ちょうど天頂付近にあって街灯りの影響が少なく、暗い視野の中に地図の銀行マークに似た光芒が見える。条件が良かったので眼視でも星雲の形はよくわかるのだが色調は判然としない。いつもの通り、デジカメをISO 3200で露出時間3.2秒に設定し、接眼レンズに押し付けると手持ち撮影した。

b0167343_2315864.jpg約50コマ撮影した中で、手ブレが少なくて光軸も合い星雲が視野の中心に写っているコマを念入りに選び16コマをコンポジットした。肉眼では判らなかった色も映像では比較的良く写っていて、青から緑がかった星雲を縁取るように赤が彩りを添えて美しい。1年前の写真と比べると随分と進歩したことがわかる。このM27を組み写真に入れると、まさに画竜点睛。ということで満を持して投稿したのだが・・。結果はあえなく選外。

「へえ、手持ちでも写るんだ!」という写真ではなくて、「えっ、これ本当に手持ち撮影なの!?」という写真を目指して、楽しみながら続けていこう。
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by Nikon8cmtelescope | 2010-08-10 23:22 | 星雲