火焔か八つ裂きか(NGC2024星雲)

目に焼き付いて忘れられない天体がある。といっても直接に見た訳ではなく、子供の頃に図鑑の写真で見たものだ。その名は馬頭星雲。オリオン座の三ツ星のうち一番東側のζ星の南側にあるガス星雲によって浮かび上がった暗黒星雲で、ちょうどチェスのコマのような見事な馬頭型をしている。こんなにきれいで不思議な天体があるのかと、その写真に魅せられて天文少年への道を歩み始めたと言っても過言ではないくらいのインパクトのある姿だった。

まさか手持ち撮影で馬頭星雲が写るとは考えていないが、直ぐ隣にある別名を八つ裂き星雲とか火焔星雲とか呼ばれているNGC2024なら写るかも知れないと、12月4日の晩に望遠鏡を向けてみた。ζ星を一旦目印にして望遠鏡に導入した後は、明るいζ星を視野から追い出して星雲を眼視で確認するが、見えていると言う確信は持てなかった。そこで日周運動の影響は覚悟の上で露光時間を5秒と長めに設定して手持ち撮影を始めた。幸い目印になる星が豊富にあるので、光軸合わせには苦労しない。そうやって撮影したコマをモニター上で確認すると、微かではあるが星雲が写っていた。

b0167343_23414141.jpg16コマをコンポジットしてみると、ζ星の蒼い輝きに圧倒されながらも臙脂色の星雲がボッーと浮かび上がってきた。暗黒星雲が星雲を2つに分ち、左右の星雲に微妙な切れ込みを作っている。お世辞にも美しいと言えるような写真ではないが、八つ裂星雲や火焔星雲と呼ばれる片鱗は見てとれる。そして、画像処理の感度を上げると、ζ星の南側に馬頭へと延びるガス星雲の存在が薄らとうかがわれるではないか。

コンパクト・デジカメのISOが今の3200から6400、さらには12800へと改良されて空の条件に恵まれれば、手持ち撮影でNikon 8cmでも馬頭星雲が捉えられるようになるのではないか、そんな期待を抱かせてくれる写真になった。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-01-27 23:46 | 星雲

白旗・・・(M77銀河)

天の川が立ち上る夏や、オリオンとシリウスが君臨する冬と比べると、秋の南天は何とも寂しい。街中からだと、フォーマルハウトを筆頭にほんの数個の星が数えられればいい方だ。今シーズンは、それでも近くに木星が輝いているので寂しさは随分と緩和されているのだが・・・・。そんな星空の空白地帯とも言うべきあたりにポツンとある「くじら座」の銀河M77と、ペガススの翔る賑やかな秋の天頂と静かな南天の境目にある「うお座」の銀河M74の2つは、メシエ天体の制覇を目指す以上は残して置く訳には行かない。

11月5日の晩は、この2つの天体を絶対にデジカメに収めようと臨んだのだが、気合いが入れば良いと言うものではない。天体観察で重要なのは機材と空の条件だ。そして機材がNikon 8cmと決まっている以上は、こちらで何とか出来るのは暗い空を求めて山に入ること。それで「鹿の声を聞きながら・・・」ということになった次第だ。

b0167343_2335487.jpg少し緊張しながら星図を頼りにM77を探す。空が暗い八ヶ岳山麓とは言え、目印になる星の少ない秋の南天で、小さなガイドスコープを使って目的の天体を導くのはなかなか骨が折れる。中腰で見上げる体勢を維持していると膝が笑う。それでも何とか、ここだと思われる場所に辿り着いた。接眼レンズを覗き込むと、どうやら目的の天体だ。比較的明るく、どちらかと言えば球状星団に近い。露光時間を3.2秒に設定して手持ち撮影し、16コマをコンポジットした。ちょうど中央に写っているが、日周運動で流れてしまい周囲がボンヤリとしている点を除けば恒星とあまり変わらない。メシエ天体で最大の銀河ということだが、逆に言えばそれだけ遠い天体だという事になる。

さて、もう1つのM74だが、望遠鏡でここだと思われる場所を中心にデジカメで長い露光時間をかけて何度も手持ち撮影したのだが、見つからない。そうこうしていると、冬の星座が次第に高度を上げて手招きしている。ここで諦めるとメシエ天体の制覇が来年の秋まで「おあずけ」になるとわかっているのだが、誘惑にあっさりと白旗をあげた。今になって悔まれるが、後の祭りである。
(撮影したメシエ天体 通算84/107個)
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by Nikon8cmtelescope | 2011-01-24 23:38 | 星雲

鳥の化石・・・(NGC457星団)

星雲・星団はメシエ天体がもちろん全てではないのだが、NGC・・・・と言われても、なかなか見ようという気持ちにはならない。ところが魅力的なニック・ネームが付いていると、とたんに色気が出てくる。散開星団を愛するオールトの雲さんのブログで、ET星団との愛称を持つNGC457の存在を知り、見てみたいと思うようになった。

11月5日の晩に星図を頼りにNGC457を探した。と言っても大げさな話ではなく、カシオペヤのW字から簡単に望遠鏡に導くことが出来た。確かにETとは、よく言ったものだ。大きな目と細い体で、こちらに向かって手を挙げて挨拶してくれているように見える。

b0167343_19413225.jpg早速に露光時間を2.5秒に設定して手持ち撮影した。16コマを選びコンポジットしてみると、ETの細い体の部分には眼視ではよく見えなかった暗い星も写って、散開星団らしく見える。さらに、広げた両腕から暗い星が意味ありげに並んで羽のようにも見えて、干涸びたような体幹からコウモリや翼竜、鳥の化石と言った姿にも見える。形の面白さでは秀逸の散開星団だ。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-01-21 19:45 | 星団

天王星三夜

連休中は木星とランデブーする天王星も追いかけた。1月4日に互いに最も近くなった後は次第に離れつつあるが、30mm広視野接眼レンズでは同一視野内で見ることができた。そこで、毎晩18時過ぎに露光時間0.6秒で手持ち撮影した4コマを、それぞれコンポジット処理した上で、3日分の画像を恒星の位置が重なるように比較明処理してみた。

b0167343_0163291.jpg
レンズの収差と光軸の影響で、恒星がピタリと重ならないのが少々残念だが、天王星に比べて木星の移動が顕著で、1月4日の画像と見比べると天王星を木星が追い越すようにしてお互いに離れつつある様子が一目瞭然だ。ガリレオ衛星の位置も3日間で大きく変わっているのがわかる。こんな画像が手軽に出来るのも、手持ち撮影の便利なところだろう。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-01-14 00:18 | 惑星

月三夜

3日間の連休中は晴天続きだった。月齢から言えば星空探訪には最適なのだが、寒さが厳しくて指先の感触が重要な手持ち撮影はお手上げの状態だ。そこで、夕方に望遠鏡をベランダに出して月を眺めた。とは言え、季節風の強いこの時期に、まして気温が大きく変化する夕刻となると、安定した気流が望めるはずもない。

8日は月齢4だったので、空が暗くなるころには月の高度も低くなり月面はユラユラと揺らいでいた。9日は穏やかで比較的暖かだったので期待して望遠鏡を出したのだが、意外にも気流が不安定で月の縁がギザギザに見えた。案の定、間もなくして強い北風が音をたてて吹き始めた。10日は寒さが厳しかったが、月の高度も高く気流が3日間で最も安定していた。それでも倍率を上げて月面散歩を楽しむような条件ではなかった。

8日は3コマ、9日と10日は5コマに分割して手持ち撮影した。短時間の撮影であっても、接眼レンズとデジカメのレンズの外枠を抑える指先が凍えて感覚がなくなってくる。手を擦りながら撮影を終えると、気流の影響の少ないコマを選んで、Huginでパノラマ合成処理した。こうして得られた三夜の月の写真を、組み写真にしてみた。やはり9日の月が気流の影響を一番強く受けていることがわかる。

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それにしても月の撮影は久しぶりだ。星雲が手持ちでも写るとわかってから、月はどちらかと言えば迷惑な存在だった。しかし、思い返せば手持ち撮影を本格的にはじめたきっかけは、2009年1月11日に手持ち撮影した満月だった。あれからちょうど2年が過ぎたことになる。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-01-10 22:53 |

天王星

天王星は6等星相当と比較的暗く、普段だと恒星と区別するのがなかなか難しい。その天王星の見かけの位置が昨年の6月と9月に木星と大接近したのだが、天候やこちらの都合で望遠鏡を向けることが出来なかった。そして、この1月4日に三たび巡ってくる木星とのランデブーは是が非でもと以前から考えていた。

さて当日の夜、家に夕食に戻るころには木星が既に西の空にまわっていた。大急ぎで食事を済ませると、ベランダに望遠鏡を出して木星に向けた。どうやら季節風の影響で西の空には薄雲が出ているようだ。25mmの接眼レンズでも気流の影響で木星の姿はユラユラと揺らぎ、かろうじて赤道縞が判別できる程度の条件だが、木星と同一視野に天王星が見えている。天王星の光度は木星のガリレオ衛星と同じ位だが、赤褐色のガリレオ衛星と比べると青味を帯びているのが眼視でも確認できる。

b0167343_0111215.jpg
右下はISOを2500で2秒の露光時間で手持ち撮影した1コマだが、恒星も幾つか写っていて視野の中での木星と天王星の位置がよくわかる。そこで、ISOを2000で露光時間を0.3秒に設定して手持ち撮影した8コマをコンポジット処理したのが左の画像だ。露光時間を抑えたので4つのガリレオ衛星も木星本体から分離されて写っている。ただし、木星自体は露出オーバーで縞模様は飛んでしまっている。さらに、18mmの接眼レンズでデジカメのズームを5倍にしてISOを3200で0.6秒の露光時間で天王星を手持ち撮影したのが右上の画像だ。面積を持って写っているのは、気流の影響に加えて甘いフォーカスと日周運動に手ブレも重なったためだが、天王星がやや緑がかった水色であることが見てとれる。

これで、「・天・」の全てをNikon 8cmで手持ち撮影したことになった。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-01-07 00:19 | 惑星

M42オリオン星雲

b0167343_0345192.jpgこうしてオリオン星雲を撮影するのはいったい何度目だろう。カノープスの存在を感じながら12月4日の晩に撮影した32コマを、さらに11月5日の晩に撮影した16コマとあわせて、2秒露光での手持ち撮影を合計で48コマ使ってコンポジット処理した。そして、星雲と重なる星々が透けて見えるようなコントラストで画像処理してみた。出来た画像は、望遠鏡で覗いた姿に非常に近い。トラベジウムの4つの星こそ一塊になっているものの、ガスに重なる影のような暗黒の模様も見たままだ。眼視では色調は判然としないのだが、どことなくこの写真のようなピンクとも青ともつかない微妙な色合いは感じられるような気がする。「天の羽衣」とは、このことではないかと思うような、軽やかさと透明感がある。

この美しい姿は、これからも折りあるごとに撮り続けることだろう。
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by Nikon8cmtelescope | 2011-01-03 23:08 | 手持ち撮影にこだわる訳