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初めての月面写真

中学2年生の時に望遠鏡を手に入れたが、当然のことながら今度は写真が撮りたくなる。幸いカメラは父親のキャノン製があった。なんでも私の誕生にあわせて購入したそうだ。生活に余裕があった訳ではないのに高価な買い物をして、夫婦喧嘩の原因になったという代物だ。
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私の誕生から折りあるごとに父が家族を撮影し、中学生以降は私が夜空を撮影したそのカメラは、私の大学卒業を待つように亡くなった父の形見の品として、兄弟の中で私がもらい受けた。もう撮影に使うことはないが、ケースも当時のままに保管してある。

三脚を買うにあたっては、近所の写真屋でカタログをもらって相当に研究し、お年玉か何かで得たお金で購入した。たぶん中学2年の終わりごろだったと思う。月面を撮影するにはカメラの高さを自由に変えられる必要があるので、ハンドルをまわすと雲台の高さがエレベーター式に動くものだった。

三脚を購入して真っ先に月面を撮影した。カメラを三脚に取り付け、望遠鏡の接眼レンズを覗き込むように位置を決めて撮影するのであるが、それがなかなか大変なのは既に書いた。しかも、うまく撮影できたかどうかは、写真屋に現像に出したフィルムを見るまではわからない。

限られた小遣いではフィルムは簡単には買えないので、1枚1枚大切に撮影して行く。だからフィルムを1本使いきるのに何ヶ月もかかった。撮り終えたフィルムをカメラから取り出す時の緊張感は相当のものだった。失敗すれば数ヶ月の努力が水泡に帰することになる。その分、現像から上がってきたフィルムを見るまでのドキドキ感はものすごかった。

初めての月面写真_b0167343_115591.jpgそうして出来上がった初めての月面写真は、今もアルバムに残っている。デジカメで接写する時に直したが、実際にはフィルムの中心からかなりズレて月が写っている。下の方がかなりピンボケなので、カメラが接眼レンズに正しく向いていなかったのだろう。写真代を節約するために、何コマか撮影した中で一番いいコマを選んでプリントに出していたので、これがベスト・ショットだったことになる。

折しも前出(3月26日に掲載)の2月1日撮影の写真とほぼ同じ月令である。基本的には同じ方法で撮影しているのだが、出来映えはデジカメ写真の遠く足許にも及ばない。しかし、この写真を手にした当時の自分が、どれほど嬉しかったかは想像に難しくない。

準備と研究を重ねたからこそ得られる喜びの尊さを、中学生の頃に味わうことが出来たのは、実はとっても貴重な経験だったのではないだろうか。

by Nikon8cmtelescope | 2009-03-31 01:01 | 天文少年の頃