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夏の夜の清涼剤

7月26日の晩に月が雲に隠れた後には、夏の星座が姿を現した。雲は多いものの空の透明度は高く、星座を形作る星々を肉眼で1つ1つたどっていくことができる。そこで、まだ撮影していない夏の代表的な二重星に望遠鏡を向けた。

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まずは、さそり座のβ星。アンタレスの頭部側の隣に見える星だ。目視だと伴星と主星の光度にそれほど差を感じないが、写真にすると随分と伴星が暗く見える。

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つづいて、はくちょう座の61番星。この星は地球から11.4光年と比較的近いため、経年的な移動(固有運動)が目立つ星として、最初に地球との距離が算出された星だ。白鳥の姿を形作る星ではないため、星座の中で目立つ存在ではないが、天文学の発展を語る上では重要な星の1つだ。

低い倍率で見ると、ほぼ明るさの等しい星が程よい間隔に並んで光っている。やや赤味がかかった輝きは上品で美しい。ご近所の美人姉妹とでも言えようか。この光が11年余り前に星から放たれた瞬間は、自分は何をしていただろうか?と眺めながら想いを巡らせる、そんな時空的な距離感の星だ。

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星が適当な間隔で寄り添って、貴金属か宝石が輝いているかのように見える二重星は、「高貴な」とか「上品な」といった表現がピッタリする。夏の夜に眺めると実に涼やかな気分になって、まさに一服の清涼剤のような存在だ。

by Nikon8cmtelescope | 2009-08-02 10:45 | 二重星