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月の雫(その2)

今になって考えてみると、「月の雫」は製法から考えても当時は秋だけ手に入るものだったに違いない。季節感のある土産として、祖母はわざわざ求めて来てくれたのだと思う。そんな祖母の気持ちに応えて、父は喜んで食べていたのではなかったか。厳しかったが、そんな優しさを持った人だった。

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二人とも遠に他界していて確かめようもないが、祖母は祖母で孫の私達よりも父の喜ぶ様子を楽しみに、土産にしていたのではなかったか。そう言えば、祖母が好きだからと言っては、祖母が来るとよく父がわざわざ練り雲丹を買ってきた。

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晩年の祖母は軽い痴ほうが出た。すでに父は亡くなっていたが、それを祖母は信じていなかった。母に「最近見ないがどうしたのか?」と、よく父の消息を尋ねた。そして、亡くなったと聞くとその度に絶句しては涙を流した。

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そんな記憶を巡りながら月を撮影していたら、久しぶりに「月の雫」を食べてみたくなった。大人になって口にすると違う味わいがあるのかも知れない。その一方で記憶の中だけに止めておいた方がいいかも、という気もしないでもない。季節的には旬のはずだが、どうしたものだろう。

by Nikon8cmtelescope | 2009-10-31 11:49 |