星空を求めて(その4)
半袖では寒くてサマーセーターを重ね着した。山荘にでも合宿している若者達だろうか、遠くから歓声が時々聞こえていたが、夜が更けるにつれて静かになった。すると時折周囲の林から鹿の甲高い声が聞こえて来る。自宅の周辺だと、立秋を半月あまり過ぎても遠慮がちに鳴くコオロギの声以外にはほとんど感じられない秋の気配が、ここでは圧倒的な勢いで迫ってきた。
望遠鏡が使えなくなったので、肉眼と双眼鏡で星空を散歩でもするようにゆっくりと眺める。思えば自宅だと条件の良い晩は星図と首っ引きで望遠鏡を次々にメシエ天体に向けてはデジカメに収めるという、まるでガイド・ブック片手に名所を次々に駆け回る旅行のような慌ただしい楽しみ方だった。じっくり眺めるよりもカメラに収めることが優先で次へと急ぐ様は、まさに観光ツアーのようだった。
しかし、ここでは双眼鏡を向けるだけで次々に星団や星雲が見えてくる。その1つ1つに立ち止まっては心ゆくまで眺めていると、宇宙と対話しているような気分になる。そうは言っても、美しい星雲・星団に望遠鏡を向けられないのは何とも口惜しいのだが・・・。
by Nikon8cmtelescope | 2010-08-31 00:16 | 月・星のある風景